アークニュース

熱中症予備軍の犬猫をみかけたら~あなたにできること~

2023年08月06日
熱中症予備軍の犬猫をみかけたら~あなたにできること~

アークが長年大変お世話になっている獣医師の西山ゆう子先生から、この猛暑の時期に注意すべき犬猫たちの熱中症についての記事が届きました。ぜひご一読いただき、今後の参考にしてみてください!

暑くて危険な夏

暑いですね。

日本では毎年、毎年30万人以上の人が熱中症のために医療機関のお世話になり、1000人以上が熱中症で死亡している。
熱中症になりかけたけど、病院に行かないで回復する人を含めるともっと多数だと容易に想像できる。

「暑い」「喉が渇いた」「めまいがする」と言葉に出すことができる人間でこの数字だ。
言葉で気持ちを伝えることができない動物たちはおそらく、もっと危険に直面していることになる。

熱中症になりそうな犬、猫をみかけたら

今日は、熱中症になりそうで危ない、という犬猫を、街中でみかけたらどうするべきかについて話します。

例えば、

近所の犬が、庭につながれたまま、水もなくハアハア言っている。駐車場に駐車してある車の中に、犬だけが残されていて、暑そうにしている。スーパーの前につながれた犬が、暑くてハアハアへたり込んでいる。

といった状況に遭遇した時。あなたができる事について、以下にまとめてみた。

行政を含めて、今の日本の現状を複数のリソースから確認した情報をご紹介する。
もし間違いがあるようならば指摘してください。

自分でできる事をする ―ダイレクト direct

直接自分にできる事があれば、まずそれをしよう。

犬が直射日光の下にいたら、リードをほどいて、近くに日陰に移動させる。
ペットボトルの水を持っていたら、少し与えてみる。
日傘を持っているのならば、日陰を作ってあげる。

緊急を要する場合、例えば犬が無人の車の中で意識不明で倒れている場合などは、
車がロックされていない可能性もあるので、ドアに手をかけてドアを開けてみようとする。万が一ロックされていなかったら、犬を出して近くの木陰に移すことは常識的に許されるだろう。

近所の庭の犬の場合は、勇気をもって自分で、玄関のベルを押して飼い主に注意してみる。

自分で行動することが、一番短時間かつ効率的に解決できる可能性があるからだ。

近くの人に協力を求める Delegate

スーパーの前で暑がっている犬の場合ならば、近くの人に、「この犬の飼い主さんを知りませんか」と聞いてみる。
案外、「あ、知ってるワ、あのおばあちゃんよ、きっとまたおしゃべりに夢中なのよ、今呼んでくるわ」となるかもしれない。

スーパーの店員に事情を説明し、店内アナウンスで呼び出してもらう。
駐車場の車の場合も、店内、場内アナウンスをしてもらうようにお願いする。

近所の犬ならば、他の近所の人に聞いてみる。「最近認知症みたいよ」という情報が得られるかもしれない。

近くの人と一緒に行動することで、より多くの情報を得られ、また早期解決につながることが多々ある。

警察を呼ぶ。通報する。 Dispatch

今や誰もが携帯電話を所持する時代だ。
次に警察に連絡しよう。

その昔、日本の警察は動物は業務外、という時代があったのは事実だが、過去10年で急速に変化した。
昼でも夜でも、動物の健康状態が危険だと思う場合は、遠慮なく警察に通報してよい。
その後、実は緊急性はなかった、犬は大丈夫だった、となってもよい。
緊急かどうかの判断は、トレーニングを受けた人や獣医師じゃないと分からない。

緊急を要さない場合は、管轄の動物愛護センターに連絡をして、懸念を通報する。
自治体の担当課では、通報があった場合、現場に行って確認し、必要に応じて飼育の改善を指導する任務がある。
ただ自治体にもよるが、すぐに現場の偵察に出てこれない場合もあるし、公務なので当然、夜間や週末は対応していない。
なので熱中症疑いのような緊急性のある場合は、遠慮なく警察に通報してよい。

環境省のサイトより
地方自治体の動物愛護管理行政担当組織の一覧https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/3_contact/index.html

記録する Document

自らできることをし、まわりの人にも熱中症になりそうな動物がいることを知らせ、警察を呼ぶという一連の行動がまず第一優先だ。

だがそんな中、できれば何枚か、現場や動物の写真や動画を撮っておこう。
自分が忙しくて無理ならば、現場に居合わせた他の人に依頼してもいい。
犬や猫の状態、環境、まわりの様子など。
これは後日、飼い主が事実を否定する時などに証拠として使えるし、公的書類の資料として提出できる。

だが繰り返しになるが、動物を助け、人にヘルプを呼びかけ、警察に通報するのがまず先だ。
いきなり写真を撮るのは非常識であり非倫理的だと感じる。

プライバシーの尊重 Disrespect に気を付ける

ここで私があえて言及したいのは、SNSへの呼びかけ時の注意である。

いろんな考え方があると思うが、こういう時にSNSで発信し、広く呼びかけることに私は疑問を感じる。

そもそも、どれだけそれに効果があるのか。

○○市本町2丁目のコープの駐車場で犬が熱中症で倒れています!
というSNSを見れば、皆心配で閲覧数フォロー数は上がるかもしれないが、現場近くにいない人は、基本何もできない。
すぐに飼い主が現れて問題解決し、犬も無事だったとしても、SNSは拡散され続けるかもしれない。

すべてが終わった後で、その飼い主や動物のプライバシーを尊重したうえで、啓蒙、予防目的でSNSで意見するのはよい。
だが中途半端な現場中継のSNS使用は止めるべきだ。

通報、事情聴取のコツ Descriptive

警察なり、行政の担当の人なりに通報する時、あるいは事情聴取の質問をされる場合。
往々にして、私たち人間は自分の感情と事実が一緒になり、相手に伝わらないことが多々ある。

緊急である状況を伝えて理解してもらうには、事実と感情を分けて説明するのがベスト

事実とは、自分が見た時の動物の状態のこと。
例えば電話で、「もしもし、すみません、すごい暑いんですが犬が苦しんでて、飼い主はもうずっといなくって、多分このままだと死んじゃう。いつもこの家はろくに散歩もしなくて、松の木も伸び放題で近所では悪評のじいちゃんなんです、早く来てください。」
と言ってもよくわからない。

「もしもし。近所の犬が敷地内で熱中症で倒れているのが見えるので電話しています。柴犬より大きい中型犬です。私は近所のものです。犬は庭で横になって意識もうろうとして、ハアハアしてヨダレを流しているのが見えます。水のボウルもみあたりません。」
こう言えば、現場の状況がストレートに伝わります。

まとめ

ペットの緊急時、自分ができる行動を5つのDの単語にまとめてみた。

もちろんそれぞれのケースで異なるので、自らの判断で行動してほしい。

残念ながら熱中症などで命を落とすケースのほとんどが、飼い主の判断ミス。
このくらいなら大丈夫と思った
去年大丈夫だったから
といった過信だ。
動物は人間より早く老化するし、気候だって毎年同じではない。
何より人間だからうっかりミスだってある。

もう一度、危機感を持って生活してほしい。
人間でさえ毎年1000人以上が暑さで死ぬ国に、我々は動物と一緒に暮らしているという事実をしっかりと認識してほしい。

動物の命は、私たち人間にゆだねられているのだ。

リンクはご自由にお貼りください。
ご自分のサイト、ブログ等でご使用する時はご一報ください。

この記事の掲載元・西山先生のブログはこちら→https://yukonishiyama.com/

新着情報